訪問入浴のアルバイトに行ってみた

医療

看護師にはいろいろな働き方があります。

看護学校の実習では病院だけでなく、老人ホーム・訪問看護・障害者の施設・保育園などさまざまなところに行かせていただきます。

病院では、小児科病棟・消化器病棟・手術室など全ての部門には行けませんが、グループごとにそれぞれの病棟に行き、また後日そのことをクラスの全員で共有します。

3年生になるとほぼ実習になります。

クリニックなどはご自分の受診などを通してだいたいどんなところかイメージがつきやすいと思います。

私は訪問入浴のお仕事をしたことがありませんでした。病院では入浴介助をしますし、なんとなくイメージはありましたが実際にしたことははじめてでした。

訪問入浴にもいろいろなパターンがあると思いますが、今日は私が経験したことをお伝えします。

3名体制

訪問入浴は各ご家庭を3名体制で回っていきます。

オペレーター兼ドライバー・介護福祉士・看護師の3名です。

オペレーター兼ドライバーは男性の介護福祉士の方でした。

介護福祉士は女性の方でした。

オペレーターは結構なスピードでバンを1日中運転します。訪問宅に到着すると、全員でバケツ・ホース・マット・タオル・バスタブなど大荷物を持ち込みます。メインにバスタブなどを運ぶのはオペレーター兼ドライバーの男性です。あと2人もかなり重いものを持ちます。

中には、階段で4〜5階ぐらい上らなければならないこともあります。

お部屋にお湯がない場合は、バンから直接お湯を引き上げます。長〜いホースを外からお部屋の中まで引っ張って入れます。バンに乗っていたら水がジャバジャバという音が聞こえていましたが、水ものせて走っていたのですね。車の上部に給湯器があってそういう場合はお湯を汲み上げられるようになっています。ホースも重いのでセッティングがかなり大変です。

訪問件数

私が行かせていただいた事業所からは毎日10台ほどのバンが出動していて、1台あたり10件ほど訪問するとのことです。ということは事業所としては1日で100件ほど訪問しているということです。すごいですね。

私もその日10件訪問しました。元々11件だったそうですが、1件都合でなくなったとのことでした。

事業所を朝8:30に出発して、帰ってきたのは20:30。休憩時間は30分強しか取れませんでした。

このペースで皆さん、週5日働かれています。

一旦事業所を出ると休憩はコンビニや車中です。昼食もバンの中でとりました。あとは夕方にも軽くおにぎりなどを食べます。体力勝負なので何か食べておかないと体がもちません。トイレもコンビニです。午前に1回トイレ休憩、昼食休憩、午後に2回トイレ休憩がありました。夕方はのどがかわいていたので、おにぎりではなく甘めの飲み物を摂りました。

予想通りハード

このような感じですので、自分の体調が優れない時にはかなりきついお仕事です。

移動だけでもハードなのに、毎回バスタブ等を設置してまたそれをバンに収納しなければなりません。

メインの業務は入浴介助です。看護師は訪問するとご挨拶をしてバイタル測定をします。猛ダッシュで測定しパッドに入力します。開始時間なども入力しなければなりません。パッドはなんとなく反応が悪いし、なにしろ初めての形式で慣れないので入力にもいちいち時間がかかります。文字の変換の仕方もはじめてのタイプですのでうまくいきません。持ち運ぶ看護師用のリュックにもどこに何が入っているのかまだよく把握できていない状況ですが、もたつくと迷惑がかかるので必死です。

バイタル測定と入力が終わると、介護福祉士の方と脱衣介助します。その間にオペレーターはお湯を浴槽にはります。

そして、利用者さんを浴槽までお姫様抱っこで移動させます。全員で持ち上げることもあれば、オペレーターと看護師で持ち上げることもあります。結構ふくよかな利用者さんも多く、絶対にお怪我をさせないよう、かつこちらの体もいためないようにしなければいけません。

入浴介助は素手で行います。私たち看護師は感染予防のため必ずビニール手袋をつけるものなので、素手ということにかなり抵抗がありました。しかも、流れ的に陰部洗浄は看護師がすることになっていました。

毎回お宅を出るときに洗面所で手は洗わせていただくのですが、ビニール手袋なしに陰部洗浄をしたことがなかったので非常に抵抗がありましたし、感染症などが心配でした。

入浴が終わると、またベッドまで移動し今度は介護福祉士と看護師で着衣介助です。その間にオペレーターは浴槽の片付けをします。

だいたいの利用者さんはクリームなどを塗布します。中には全身にローションを塗ることもありますが、ご家族がされるのではなく私たちスタッフで行います。気切のガーゼ交換などもこちらで行います。この時もビニール手袋はしません。病院では考えられないことですが。

ドライヤーもこちらが行います。爪が伸びていたら介護福祉士が爪切りをします。

看護師は入浴後にバイタルをもう一度測定し入力します。ちなみに入力するパッドを破損すると弁償とのことです。

また重い道具一式をバンに戻し、乗り込み次のお宅へ移動します。

その間に車中でできるだけパッドに他の必要項目を入力したいのですが、車が揺れるので入力できません。

加えて老眼でパッドの字が見にくく苦労しました。

信号待ちの時に必死に入力しました。

全ての動きはマニュアル化されている

このように飛ぶように作業をこなしていかなければなりませんので、全てにおいて動き方が決まっています。

誰が何を運ぶか、どのように動くか、立ち位置はここで、洗い方にも全て順番があります。利用者さんによって細かい部分に違いはありますが、基本的には同じパターンで動きます。このマニュアル化はすごいですね。こうすることにより、チームの無駄を大幅に省くことができます。

このようにしなければ、1日に10件なんて回れません。

実際浴槽につかっていただいている時間は15分強ほどでしょうか。その前後が25分。車とおうち間の移動が10分。お宅からお宅への移動が10分。この合計で1件1時間くらいでしょうか。

10件で10時間。事業所からその日の訪問エリアまでの往復が1時間。休憩が1時間。拘束時間としては12時間でしたから計算が合いますね。

これでも猛ダッシュでこなしてこれですから、車の運転スピードもかなり早いです。人によっては恐怖を感じるかもしれませんね。

結局、洗う順番はよく把握できないまま終わってしまいました。

事業所によって看護師の仕事内容が違う

これはインターネットから得た情報ですが、事業所によっては看護師はほとんど洗体をしないところもあるようです。中には、「看護師はバイタル測定くらいだったから楽でした。でもお給料は安かったです」というコメントもありましたから、業務内容にはかなり差があるかもしれません。4人体制で巡回するところもあるようです。

私の場合、本当にがっつりでしたから終了後には髪型が完全に別のものに変わっていました。でも、お給料もよかったです。12時間拘束の11時間半労働で28,000円くらいだったと思います。8時間を超えると1.25倍になりますから。しかし、家庭の事情などを考えるとこのペースで定期的に働くのは私には無理ですね。

気になった点としては、どんなにベテランのオペレーターさんや介護福祉士さんよりも、初心者の看護師の方がお給料がよくなるようだ、というところです。ちょっと複雑ですね。

あと現状として、どこの訪問入浴の事業所も看護師不足で困っているようです。

看護師が1人足りなければ、1台バンが出せないということになり、そうなるとその分を他のチームで振り分けて補うのでますますスタッフ全員の終了時間が遅くなるそうです。

お仕事をした感想

・利用者さんが気持ちよさそうにされていたことが嬉しかった

・(これは自分の勝手な思い込みでしたが)利用者さんのお宅が汚部屋だったらどうしようかと心配でしたが、裕福なきれいなご家庭が多かった

・車が苦手な方にはこのお仕事はムリですね…

・せめて19時までに業務終了するのであれば、もう少し看護師が集まってくるのではないだろうか

・社会的にはかなり有意義なお仕事である

・お仕事の中に医療行為がないという部分においては、やはり長期的に看護師を集めにくい部分はあるのではないか(看護師も医療行為に常に慣れていないとつぶしがきかないという考え方はあると思います)

・訪問入浴のメンバーを看護師以外の方でも可能なようにできれば看護師不足で業務に支障が出る、という問題は解決されるかもしれませんが、状況的に難しいか…オンラインで常に報告して確認をしても、急変時の対応がどうでしょう…でも、絶対救急車を呼ぶという形になるのであれば、看護師じゃなくても救急車は呼べますが…

このようにいろいろと考えさせられました。

訪問入浴にたずさわっておられる皆さま、これからも応援しています。

以上、読んでいただいてありがとうございました。

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