腰の痛み…
これで悩まれている方は多いですよね。
外来で診察をしていると、絶対に腰痛で受診される方が毎日何人かいらっしゃいます。
ここでは腰痛のとらえ方についてお伝えしたいと思います。
急に腰痛に襲われたら
腰痛には急性的なものと慢性的なものがあります。
そして、原因がはっきりしているものから特定できないものまで様々あります。
ここでは、急性腰痛症、例えば「ぎっくり腰」などのように急に腰を痛めてしまった場合の対処法についてお伝えします。
また、腰椎の骨折など、それまでは元気だったのに急に骨折によって動けなくなってしまった場合についても、お伝えします。
まず、治療に関してはどちらも「安静」です。
まずは安静にしましょう
こう言われたら、多くの患者さんは
いや、何か手立てがないんですか。
仕事で大事な用事もありますし。
なんとかしてください。
安静て…せっかく病院に来たのに…
注射か何かして早く治してくださいよ
こう思われる方が多いと思います。
しかし、「安静」とは最良の治療の一つです。治療の中では第一選択の治療です。
注射や点滴をしても、一時しのぎにしかならないことがほとんどです。
中には注射や点滴をしても全く効かず、結局動けなくて入院となる方もいらっしゃいます。
「安静にする」ことって「治療」だという概念がない方が多いかもしれないのですが、医療においてはどの分野でも「安静」という「治療」は重要視されます。
ということで「安静が治療」という概念がないと、何もしてもらえない、という気持ちになるかもしれません。特に男性の方はイライラされる方も多いです。
「あー、もうこんなことしている場合じゃないのに!
なんで、病院なのにすぐ治せないんだ!」
そのお気持ちはよくわかります。
私たちもできたらすぐに痛みがとれて帰っていただきたいですし、気持ちもさっぱりと元気になって帰っていただきたいのですが、それがそんなにうまいこといかないんです…
それができれば、病院の評価も上がるでしょうし、お互いに万々歳なんですけどね…
自分の体を治すのはご自身の体の「治そうとする力」です。
医療はあくまでもただのお手伝いにすぎません。
あきらめも大事
さて、「安静にする」ってお伝えしましたが、具体的にはどういうことをさすのでしょうか。
言い換えれば、「無理をしない」、こういう優しい言い方もできるかもしれません。
要は、「痛くなるようことをしない」ということなんです。
動いたら痛む、という場合は、動かずに横になって過ごす時間を確保する、ということです。
実際、本当に痛すぎて動けない時は必然的に寝たきりの状態になりますよね。
それが、ちょっと無理したらなんとか動ける、という場合に最強の葛藤が生じるのです。
無理したら動けるから動けるようにしてほしい、と誰しもが思うものです。
ですが、それをあえて動かないようにして痛みが出ないようにする状態を作り出す、これが「安静にする」です。
この「安静にする」状態を作り出すには、自分の中で相当な覚悟が必要となります。
もう諦めるしかありません。
いろんな人に迷惑をかけるし、どうしてもしなければならないことができなくなる、そんなこと耐えられないですよね。
でも、もし自分ではなく、他人がそのような状態で動けなくなったと考えてみたらどうでしょう?
無理せずゆっくり療養に専念してほしいと思いませんか?
気になっていることはどうにでもなるから、そんなことは気にせずまずはしっかり治してください、と思いませんか?
腹をくくるってこのような場合にも使える言葉だと思います。
急な腰痛の場合の安静は数日から2週間ほどと一時的なことが多いです。
骨折の場合は1〜2ヶ月ほどです。
安静も痛みの度合いによって調整すればいいと思います。
例えば、最初はトイレ以外は動けなかったけど、なんとかシャワーができるようになり、しばらくしたら、1〜2時間は立って動けるようになったから、1〜2時間動いたら20分は横になる時間を設ける、とか、休みの日はできるだけ横になって過ごす、とか症状に合わせて安静度も変えていけばいいと思います。
ちなみに、私が勤務している病院では、腰の骨折の場合、最初の3週間ほどはトイレをベッドの上でしていただいています。完全なる床上安静です。もちろん、食事や洗髪、体を拭いたり着替えたりもベッドで横になったままで行います。
これは医師の方針によるのですが、腰の骨折の場合、座った姿勢や立った姿勢をとることにより、圧迫骨折して変形した部分が重力の力によりさらに変形するのを防ぐために行います。
患者さんが若い方の場合などはトイレだけ行ってもOKにする医師もいます。
結局無理をして動き続けると、その分治りが遅くなりますし、余計悪化することもよくあります。
ですので、急がばまわれ、で痛みが出た最初の数日は、腹をくくって特に安静を心がけた方が治りが早いのではないかと思います。
めちゃくちゃ痛い時って痛みどめやシップもあまり効く感じが得られなかったりしますしね。
安静というのは最強の治療ですよ。
腰のベルトとは
かつてサッカーのネイマール選手が他の選手に背中を蹴られて骨折したことがありましたが、確かその3週間後ぐらいに日本に来ていたように記憶しています。
間違っていたらごめんなさい。
そのニュースを見てとても驚いたことを覚えています。
通常であればまだまだ安静期間中なはずだからです。
しかし、彼はプロのサッカー選手です。
腹筋背筋は強靭でしょうから、折れた背骨を代わりに支えるのに十分な筋力があったのだろうと思います。
もちろん、コルセットか何かはしていただろうと推測されますが、相当体を鍛えていたからこそできたのだろうと思います。
さて、そこまで強靭でない方が安静という治療の他に頼れるのが「腰のベルト」です。
骨折の場合は甲羅のようなフレームコルセットというものを使います。
ぎっくり腰のような急性腰痛症の場合は、腰をサポートするために幅が広くてマジックテープでとめるベルトを使用します。
「腰ベルト」でアマゾンや楽天などを検索してみたら、いろんな種類のベルトがたくさん出てきます。
マックスベルトは保険が効きますので、病院でしたら3割負担の場合600円ほどで買えます。
ただし、診察代がかかってきますのでどちらがお得かはわかりませんが、ネットだと1800円くらいで購入できます。
もし、今までに購入したことがあって、もうぼろぼろだから新しいのが欲しいんだけど、受診する時間がなくて、という方がいらっしゃいましたらネットでも購入できますよ。
その際には、前と同じ大きさにするのではなく、きちんとメジャーで体の大きさを測ってくださいね。
体の大きさにあったものを購入するようにしてください。
マックスベルトには白と黒があります。
もし私が購入するならなんとなく黒の方がかっこいい感じがするので黒を買うかもしれません。
私が勤めている病院では「日本シグマックス株式会社」というところの「MAX BELT」というものを処方しています。
「me2」(上)と「me3」(下)があって、「me2」の方が幅が狭めなので小柄なおばあさん等に向いています。
だいたいは「me3」を処方することが多いです。こちらの方は2と比べて幅広で支柱がありますのでしっかりとサポートしてくれます。
長期間使用すると腹筋や背筋が落ちてしまいますので、症状が落ち着いたら徐々にはずしていきましょう。
寝ているときははずす方が楽かもしれませんね。
また、シップをするときはベルトでかぶれやすくなるので、できればベルトを装着していない間にシップを貼るといいかと思います。
例えば、夜寝る前にシップを貼って寝て、朝起きたら、シップをはずしてからマックスベルトを装着する、というパターンはおすすめです。
ベルトは基本的には肌着の上につけてください。
特に肌が弱い方はかぶれたら軽症のうちに皮膚科を受診して、軟膏などのお薬をもらってかぶれを予防してくださいね。
腰痛を予防するには
腰痛を予防するには、一般的には
・腹筋や背筋をつける
・ストレスをためない
・姿勢に気をつける
・寝る時は横向きで背中を丸くして寝る
など様々な方法がありますが、私が感じているのは、体重の重い方が全体的に多い、ということです。
細い体型の方は腰に限らず、膝の痛みも出にくいようです。
ただし、首の痛みに関しては細い体型の方が多いように感じます。
体重が重いと体の様々な部分に負担をかけるのでしょう。
ですので、体重が重めの方にはダイエットが最も有効な治療方法かもしれません。
1日でも早く腰痛が治りますようにお祈りしています。
読んでいただいてありがとうございました。
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